膠原病とは

膠原病

膠原病とは、全身の結合組織(骨、軟骨、腱、靭帯、真皮 など)を構成するコラーゲンに炎症、障害を引き起こし、様々な臓器症状をきたす疾患群の総称になります。これは、リウマチ性疾患、自己免疫疾患、結合組織疾患といった3つの側面を持つ疾患概念と捉えられています。

古典的には、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、全身性強皮症、多発性筋炎・皮膚筋炎、結節性多発動脈炎、リウマチ熱を膠原病と呼んでいましたが、現在ではその対象範囲は広くなっています。

遺伝的関与が言われている疾患もあり、そこに何かしらの環境要因(感染症、薬剤、外傷、ストレス、出産、紫外線 など)が加わることで発症するとされています。

発病の原因が明らかでない、治療法が確立されていない、稀少疾患である、長期の療養を必要とするものは、国の指定難病とされています。

主な膠原病の種類

  • 関節リウマチ
  • 全身性エリテマトーデス
  • シェーグレン症候群
  • 混合性結合組織病
  • 全身性強皮症
  • 多発性筋炎・皮膚筋炎
  • 高安動脈炎
  • 巨細胞性動脈炎
  • 結節性多発動脈炎
  • ANCA関連血管炎(顕微鏡的多発血管炎、多発血管炎性肉芽腫症、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症)
  • 強直性脊椎炎
  • 乾癬性関節炎(関節症性乾癬)
  • リウマチ熱
  • 成人スティル病
  • ベーチェット病
  • サルコイドーシス
  • 抗リン脂質抗体症候群

など

症状、経過

膠原病の種類には様々なものがあります。
それぞれの疾患には特異的(特徴的)な症状もありますが、共通でみられる非特異的な症状もあります。また、結合組織は全身に分布しているため、全身どこの臓器に障害が起きてもおかしくありません。
原因不明の発熱、疲労感、関節の痛み・腫れ・こわばりといった症状は共通でみられやすく、紅斑や紫斑などの皮膚症状、間質性肺炎などの肺障害をはじめ、心臓、腎臓、消化管、眼、神経など全身のあらゆる臓器に障害を及ぼします。

初期には風邪や老化現象と似ていることもあり区別がつきにくいこともありますので、これらの症状がなかなか改善しないという場合には一度ご相談ください。

また、膠原病は症状が良くなったり悪くなったりを繰り返すこともあります。良くなったからと治療を中断すれば、知らぬ間に病気が進行することもありますので、定期的な通院を心がけてください。

主な膠原病

全身性エリテマトーデス

症状・特徴

発熱、易疲労感、関節痛・筋痛、皮疹(顔面紅斑 など)、尿検査異常(たんぱく尿、血尿 など)、血液検査異常(貧血、白血球減少(リンパ球減少)、血小板減少 など)、呼吸苦(間質性肺炎、肺胞出血、肺高血圧症、胸膜炎 など)、腹痛、けいれん、意識障害など症状は多岐に渡ります。寒冷の刺激やストレスをきっかけに手指の色調に変化を起こすレイノー現象と呼ばれる症状を起こすこともあります。
20~40歳の若年女性に多いとされています。

原因

はっきりとはわかっていませんが、紫外線、ウイルス感染、妊娠・出産、外傷、薬剤の関与が言われています。

全身性強皮症

症状・特徴

手指の腫れぼったさ、こわばりから始まり、手から腕、体の中心に向かって皮膚の硬化が進んでいきます。血管障害によりレイノー現象や指先に潰瘍ができやすく、肺線維症や肺高血圧症、心外膜炎による呼吸苦が出たり、食道蠕動運動の低下から飲み込みにくさ、胸やけ(逆流性食道炎)が出たりします。ほかにも腎機能障害や不整脈など皮膚以外の症状も多くられます。
30~50歳代の女性に多くみられますが、70歳以降の高齢者にも発症することがあります。

原因

はっきりとはわかっていませんが、免疫異常、線維化、血管障害が複合的に絡んでいるとされています。

多発性筋炎・皮膚筋炎

症状・特徴

倦怠感・易疲労感に加え、発熱をきたすこともあります。筋肉の症状として筋力低下や痛みが出ます。これは身体に近い上腕や太ももの筋肉で多く、洗濯物を干すときやつり革につかまるときに腕をあげにくい、階段が登りにくい、椅子から立ち上がりにくいといった症状が出ます。喉の筋力が低下すれば、飲み込みにくい、しゃべりにくいといった症状が出ることもあります。心臓の筋肉が障害されれば、不整脈や心不全を起こすこともあります。
皮膚筋炎では、日光の当たる顔や手、首元を中心に皮疹がみられ、刺激を受けやすい肘や膝にもみられます。むくみを伴ったまぶたの紅斑はヘリオトロープ疹、手指の関節面にみられる紅斑はゴットロン丘疹と呼ばれ、特徴的です。

間質性肺炎の合併もみられ、時に急速に進行することで命に関わります。
悪性腫瘍の合併がみられることもあり、全身を詳しく調べる必要があります。

中年の方に多く、他の膠原病と同様に女性で多くみられます。

原因

はっきりとはわかっていませんが、免疫異常によって自らの筋肉や皮膚、肺などを攻撃して起きると言われています。悪性腫瘍が原因となることもあります。

結節性多発動脈炎

症状・特徴

血管炎の一つで、全身に分布する中型から小型の動脈に炎症を起こします。全身症状として発熱、倦怠感、頭痛、体重減少などをきたすほか、血管の破壊、狭窄により臓器の血流障害をきたし、様々な症状を引き起こします。関節・筋症状(関節痛、筋肉痛)、皮膚症状(皮疹(紫斑、網状皮斑、結節性紅斑 など)、皮膚潰瘍、手足の壊死)、末梢神経症状(しびれ、運動障害)、腎障害(急性腎不全、腎梗塞、高血圧)は頻度が多くみられ、中枢神経症状(脳梗塞、脳出血)、心症状(心筋梗塞、心外膜炎)、消化器症状(消化管出血、穿孔、梗塞)のように命に関わる重篤な症状を引き起こすこともあります。肺や眼に症状を起こすこともあります。
40~60歳代の方に多く、男性にやや多くみられます。

原因

明らかではありませんが、肝炎ウイルスなどのウイルス感染後に発症する方がいます。

リウマチ熱

症状・特徴

溶連菌感染をきっかけに自己免疫反応がみられ、概ね2~3週後に発熱、関節炎、心臓の炎症(心外膜炎、心内膜炎 など)、舞踏病、皮疹などをきたします。関節炎は、膝、肘、足首、手首で多く、日によって痛む関節が移動する(移動性関節炎)のが特徴です。心臓の炎症では、胸痛や息切れなどの症状がみられます。
5~15歳の小児にみられますが、抗菌薬加療で予防が可能であり、日本での発症は多くありません。

原因

溶連菌感染をきっかけとした免疫異常により発症します。

膠原病の治療について

疾患により治療内容は異なりますが、多くは薬物療法を行います。
発熱や関節痛に対しては、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やアセトアミノフェンなどの解熱鎮痛薬で症状を和らげます。血流障害に対しては、血管拡張薬や抗血小板薬などで循環の改善を目指します。臓器障害を認めるときには、ステロイド薬を含めた免疫抑制薬などで治療を行います。これらは早期発見・早期治療が、その後の生命予後・機能予後に影響を及ぼすため、現在重篤な合併症がない方でも定期的な通院、経過観察が必要となります。個々により症状の程度、治療薬による副作用リスクが異なるため、一人一人に合わせて薬剤調整を行っていきます。